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2026-07-06

クリニック設計の全て:開業からデザイン、費用まで徹底解説

クリニック設計の全て:開業からデザイン、費用まで徹底解説

「理想のクリニックを開業したい」「患者に安心と快適を届けたい」、そんな想いを持つ先生の皆さまへ、本記事ではデザイン建築設計事務所がこれまでに培ってきた豊富な医療施設設計の経験をもとに、開業準備の流れから設計の要点、費用感、法的手続きなどを網羅的に解説します。

設計事務所選びでお悩みの方、初めての開業をスムーズに進めたい方にとって、今後の判断に役立つ知識とヒントを凝縮した内容です。

どうぞ最後までご覧いただき、理想のクリニックづくりへの第一歩にお役立てください。

目次

クリニック設計の第一歩:基本を理解する

患者とスタッフに最適な空間デザイン

法規制と手続き

開業準備をスムーズに進めるために

まとめ:理想のクリニックを実現するために

クリニック設計の第一歩:基本を理解する

クリニック設計の第一歩:基本を理解する

クリニック設計の基本的な流れ、設計事務所の選び方、そして費用相場を理解しておくことが、成功への第一歩です。このセクションでは、これらの知識を順番に解説します。

クリニック設計の流れ

クリニック設計は、大きく分けて「基本構想」「基本計画」「基本設計」「実施設計」「工事」「竣工」の6つの段階で進められます。各段階で専門家との綿密な打ち合わせを行い、計画を具体化していくことが重要です。

基本構想

先生の診療方針やクリニックのコンセプト、事業計画を立てます。建物や内装に関しては、どのようなクリニックにしたいかの基本的な構想を練り、専門家と連携しながら必要な広さ、配置、設備などを検討します。

基本構想の段階で事業計画をしっかり詰めておくことで、基本計画以降の検討を内容を積み上げながら進めていくことができます。

基本構想を行わずに進めてしまうと、途中でコンセプトが変わってしまったり、次々とアイディアが出てきてまとまりのない計画になったり、変更が重なることで当初想定していた契約や予算とかけ離れてしまうケースもあります。

どういうクリニックにしたいか、どういう設備を導入するか、どんな部屋が必要かなど、要件整理をしっかりとまとめましょう。事業計画がしっかりしていれば、より良い施設ができ、開業後の運営も安定したスタートが切れます。

基本計画

基本構想の診療方針やコンセプトに基づいて、設計プランニングを行います。建物と外構、建物内のゾーニング、プランニングなど、コンセプトに沿った計画案を設計士が提案します。

医療機関のゾーニング構成は、病棟、外来、診療、管理(バックヤード)、供給(設備等)に分けて考え、各ゾーンの関係性や諸室との連携性を考慮して計画していきます。病院設計の場合は、これらのゾーニング構成の比率をチェックすることで、無駄のない設計ができているかを確認することもあります。

基本計画では各部屋のレイアウトを色々と検討していきますが、基本設計に入ってから部屋の配置を大きく動かすと計画全体に歪みが生じやすいため、この段階でプランニングをしっかり固めることが重要です。

基本設計

基本計画をもとに、平面図や配置図、立面図などを作成し、具体的な設計を行います。壁の厚みや柱の配置も検討し、デザインや間取りなどより細かい設定をしていくとともに、法規制への適合性もより詳細に確認していきます。

建物のデザインや構造(木造、鉄骨造、RC造)はイメージがつきやすいかもしれませんが、空調、給排水、セキュリティー(鍵、監視カメラ)、ネットワーク、ナースコール、呼び出しシステムなど、医療に関わる設備計画についてもこの段階で方針を決めていきます。

実施設計

基本設計をさらに詳細に詰め、工事や工事見積もりに必要な図面(意匠図、構造図、設備図、詳細図など)を作成します。

建築に関わる方でないと線や記号ばかりで分かりにくいかもしれませんが、多くの図面には右下に何の図面かの記載があります。先生やスタッフの方にとってチェックしやすいのは意匠図と設備図で、意匠図は建物全体が分かりやすく、設備図は照明・空調・給排水など要素ごとに分かれて記載されているので、それぞれ見比べていただくと理解しやすいと思います。実施設計図がまとまることで、工事の見積もりが可能になります。

工事

実施設計図に基づいて工事見積もりを取り、工事契約を経て実際の工事を行います。施工業者は設計図面通りに工事を進め、設計事務所はその通りに施工されているかをチェックします。

素材などを指定しない場合は中等品質のものが使われるため、具体的に何を使用するかは設計事務所が施工業者と協議して選定し、先生に最終確認をしていきます。設計事務所と施工業者は工事内容についての専門的な会議(分科会)を定期的に行い、先生を交えた定例会議は別途設定して工事の進捗報告や素材の選定などを行います。工事ではコンセントの位置や高さなども最終確認しながら進めていきます。

経験豊富な設計事務所や施工業者は、先生の確認・検討にかかる期間を見込んでスケジュールを組みますが、慣れていない業者だと確認の余裕がなく、急な確認を求められることもあります。先生自身が確認すべき事項のスケジュールを把握し、余裕をもって進めてもらえるようにするとよいでしょう。

竣工

工事が完了し、最終的な検査を経てクリニックが完成します。検査は、施工業者の検査→設計検査→消防の検査→建築検査機関の検査→施主検査→保健所検査の順に行われるのが一般的です(保健所検査が施主検査より先に行われる場合もあります)。検査後に必要な修正を行い、引き渡しとなります。

内装工事の場合は工事完了をもって終了ですが、新築工事の場合は引き渡しから一定期間後に改めて建物の状態を確認する検査が行われることもあります。保守検査の内容は、工事契約時に確認しておくとよいでしょう。

以上が建築設計工事に関わる一連の流れです。それぞれの段階で専門家との連携が不可欠であり、先生のコンセプトやビジョンをしっかりと共有し、実現可能な設計に落とし込むことが成功の鍵となります。

設計事務所の選び方

理想のクリニックを実現するためには、信頼できる設計事務所を選ぶことが重要です。選ぶ際には、以下のポイントに注目しましょう。

  • 実績と専門性

医療施設の設計実績が豊富で、クリニックの特性を理解している設計事務所を選びましょう。クリニックと言っても医科・歯科など特化している事務所もあるので、これまでの実績を確認してみるとよいです。

  • 設計士との相性

担当の設計士とスムーズにコミュニケーションできるかどうかも非常に重要です。積極的に意見交換を行い、要望を伝えやすく、理解して設計に落とし込める設計士を選定しましょう。

  • 提案力とデザイン力

先生のコンセプトやビジョンを具現化する提案力と、デザイン性の高い設計ができるかもポイントです。デザイン力はあっても医療設計のプランニングが弱い事務所の場合は、医療に強い設計コンサルタントを併せて起用することで補うこともできます。デザインを重視して事務所を選ぶ場合は、医療設計コンサルタントの併用も検討してみるとよいでしょう。

  • 費用と見積もり

設計費用は事務所によって異なります。複数の事務所から見積もりを取り、費用対効果を比較して検討しましょう。大手設計事務所は費用が高めの傾向にありますが、その分だけ経験値やチェック体制、バックアップ体制が整っています。とはいえ実際に設計を担当するのは個々の設計士ですので、設計士の力量(医療の熟知度、コミュニケーション力)と費用の両方をしっかり見て比較することをお勧めします。

  • アフターフォロー

竣工後のサポート体制も確認しておきましょう。定期的なメンテナンスや、問題発生時の対応など、長期的な視点でのサポートが重要です。

複数の設計事務所を比較検討し、クリニックのコンセプトや予算に合った事務所を選びましょう。多くの方は3社程度を比較検討されています。事例見学や設計士との面談を通して、事務所の雰囲気や対応を確認することも大切です。

費用相場と内訳

クリニック設計には様々な費用が発生します。費用相場を把握し、予算内で理想のクリニックを実現するための計画を立てましょう。設計費用の内訳としては、基本設計料、実施設計料、監理料などがあり、建物の規模や構造、設計事務所によって金額は異なります。

設計料の考え方については、建築士法第25条に基づき国土交通大臣が定める「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準」(業務報酬基準。現行は令和6年国土交通省告示第8号で、その前身が平成31年国土交通省告示第98号です)が公表されています。これは建物の用途・規模ごとの標準的な業務量(略算表)をもとに、人件費単価や難易度による補正を加えて算出する「略算法」の考え方を示したものです。ただしこれは法的拘束力のある料金表ではなく、報酬の妥当性を判断するための目安・参考基準という位置づけです。実際の設計料は、この基準を参考にしつつ設計事務所ごとの個別見積もりで決まります。

規模にもよりますが、一般的に設計費用は建築費用の10%〜15%程度が目安です。これより安い事務所もありますが、設計業務には先生とのコミュニケーション時間や実務量が必ず発生するため、極端に安い場合は業務内容のどこかが削減されている可能性があります。見積もりの内訳をしっかり確認するとよいでしょう。

その他、工事費用や建築工事外費用(医療機器、ネットワーク等)も発生し、これらはクリニックの規模や設備、デザインによって大きく変動します。費用を抑えるためには、あらかじめ予算を明確にし、コストパフォーマンスの高い素材や設備を選ぶことも重要です。

補助金や助成金制度の活用も、費用を抑える有効な手段です。地域の制度や国の制度を事前に調べ、設計事務所に相談すると適切な制度を紹介してもらえることもあります。費用に関する情報は設計事務所や専門家から正確に入手し、複数の見積もりを比較検討したうえで、予算内で理想のクリニックを実現する計画を立てましょう。

患者とスタッフに最適な空間デザイン

患者とスタッフに最適な空間デザイン

デザインの基本

クリニックのデザインは、患者とスタッフの満足度を左右する重要な要素です。理想の空間を実現するためには、デザインの目的をまず明確にしましょう。患者に安心感を与えるのか、先進的なイメージを打ち出すのか、ターゲット層に合わせたデザインを考えることが重要です。

次に、色彩、照明、素材、家具といった空間の構成要素が全体に与える影響を考慮し、バランスを見ながらデザインを進めます。例えば待合室にはリラックスできる色合いや素材を使用し、診察室には清潔感と信頼性を感じさせる色合いを選ぶなど、各空間の目的に合わせたデザインが大切です。

最新のデザインを取り入れることで競合との差別化を図り、患者の目を引くこともできますが、トレンドだけに流されず、クリニックのコンセプトや目的に合致したデザインを選ぶことが重要です。専門家と連携し、プロの視点を取り入れることでより質の高い空間を実現できるでしょう。

なお病棟などがある場合で、内装デザインをよりレベルの高いものにしたい場合は、設計事務所とは別にインテリアデザイン事務所を検討することもあります。建物の規模が大きくなると外装だけデザイナーを入れるケースもありますし、産婦人科などでは内装をインテリアデザイン事務所に任せ、より細やかなデザイン表現とするケースもあります。

動線設計

クリニックの動線設計は、患者とスタッフの動きやすさを考慮し、効率的な空間を実現するために不可欠です。動線設計が適切でないと、必要なスタッフ数が多くなったり、患者の待ち時間が長くなったり、業務効率が低下したりする可能性があります。

患者の動線は、受付、待合室、診察室、検査室、処置室、会計、そして出口へと続きます。各スペースへのアクセスを分かりやすくし、無駄な移動距離を短くすることが重要です。例えば受付から待合室、待合室から診察室への誘導を明確にし、案内表示の設置や通路幅の確保など、患者が迷わず移動できる工夫が必要です。

また患者さんが採尿を行った際に、スタッフが気づきやすく検査しやすい動線設計も欠かせません。先生自身が関わる部分ではありませんが、看護師などは常にこの点に気を配る必要があるため、ゾーニングや動線計画が重要になります。診察室や処置室への出入りを他の患者の視線から遮るなど、プライバシーに配慮した動線設計も大切です。

スタッフの動線は、診察室、処置室、スタッフルーム、検査室、ストックルームなどを結びます。診察室と処置室を隣接させて必要な器具や備品をすぐに取り出せるようにする、スタッフルームから各部屋へのアクセスを良くするなど、スタッフの負担を軽減する工夫が求められます。動線設計は、患者とスタッフの快適性、業務効率、クリニックの運営効率に大きく影響するため、専門家と連携し、規模や診療内容に合わせた最適な設計を行いましょう。

内装のポイント

内装は、患者が最初に目にする、クリニックの第一印象を決定づける重要な要素です。

まず素材選びです。壁には汚れがつきにくいクロスや抗菌・抗ウイルス効果のある素材を、床には掃除がしやすく耐久性のある素材を選ぶなど、清潔感がありメンテナンスが容易な素材選びが求められます。

次に色使いです。待合室にはリラックス効果のあるアースカラーや自然光を取り入れることで明るく開放的な空間を演出でき、診察室には清潔感のある白を基調としつつ、アクセントカラーとして患者の不安を和らげる暖色系の色を取り入れるのもよいでしょう。

照明も重要な要素です。間接照明を取り入れることでリラックスできる空間を演出しつつ、十分な明るさを確保することで診察や治療の質を向上させることができます。

最後に収納スペースの確保です。診察に必要な器具や書類を整理整頓するための十分な収納を確保しつつ、デザイン性の高い収納家具を選んだり、バックヤードが見えないように設計したりすることで、機能性と見た目のバランスを両立させましょう。

バリアフリー・ユニバーサルデザイン設計

診療科目によって対応レベルは変わりますが、高齢者や体の不自由な患者様が多く来院するクリニックでは、安全かつ快適に利用できるようにするための設計が不可欠です。バリアフリー設計は法的要件を満たすだけでなく、誰もが利用しやすい空間を実現するための重要な要素です。車いすの患者様への対応をどこまで施設に反映するかは、面積が増えることで工事費にも影響するため、事前に検討しておくとよいでしょう。

ユニバーサルデザインについても、年齢、性別、国籍、病気、障害等に応じてプランニング、サイン計画、色調計画などをどこまで考慮するかを基本設計の段階で定めておいた方がよいです。近年は高齢者向けの色調計画だけでなく、認知症患者向けや特定の疾患に応じたユニバーサルデザインもありますので、どこまで検討するかを利用者像に照らして決めていきましょう。

バリアフリー設計では、まず入り口のスロープや自動ドアの設置が挙げられます。車椅子やベビーカーを利用する患者様がスムーズに出入りできるよう、玄関前の段差をなくし、クリニック内を下足とする場合もフラットな状態にすることが大切です。

次に通路幅の確保です。車椅子や歩行器を利用する患者がスムーズに移動できるよう、通路幅を広く確保することが重要です。車いすの自走にはミニマム75cm、通行できる幅としては90cm以上が推奨され、120cm以上確保するとより余裕を持って移動できます。車いすと歩行者がすれ違うには150cm以上あるとよいでしょう。待合室や診察室など患者様が滞在する空間も、車椅子が回転できる十分な広さを確保しましょう。

最後にトイレのバリアフリー化です。車椅子対応のトイレを設置し、手すりや非常ボタン、便器の高さなど利用者の使いやすさを考慮して設計しましょう。またバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)では、規模や用途によってオストメイトの設置が求められる場合がありますので、要件を確認していきましょう。その他、点字ブロックや音声案内、手話対応など、視覚や聴覚に障がいのある患者への配慮も必要に応じて検討ください。

ただしバリアフリーもユニバーサルデザインも、あらゆるケースに対応しようとすると相応のコストがかかります。全ての方が使いやすいことは望ましいですが、想定される患者ターゲットに合わせて必要な設計を選ぶとよいでしょう。

<用語解説>

・ユニバーサルデザイン

年齢、性別、国籍、病気、障害など多様な人々にとって誰もが利用しやすいように、施設や情報、製品などを設計すること。

感染対策

感染対策は、患者とスタッフの安全を守り、クリニックを安心して利用できる空間にするために不可欠です。設計段階から感染対策を考慮した空間づくりを行いましょう。

まず換気システムの導入です。適切な換気は空気中のウイルスや細菌を排出し、感染リスクを低減するために重要です。施設内の空気の流れを円滑にする計画と、換気効率の良いシステムによる定期的な換気を組み合わせましょう。診察室や処置室など感染リスクの高い場所には、高性能フィルターを備えた空気清浄機の設置も有効です。

次にゾーニングです。受付や待合室などの患者エリアと、診察室や処置室などの医療従事者エリアを分離し、汚染区域と非汚染区域を明確に分けることで感染拡大のリスクを抑えられます。手指消毒液の設置や使い捨てスリッパの導入なども検討するとよいでしょう。

最後に清掃しやすい素材の選定です。壁や床には汚れがつきにくく、抗菌・抗ウイルス効果のある素材を使用することで感染リスクを低減できます。コロナ禍以前からある手法ですが、取っ手や壁、床など人が触れる部分に細菌を不活性化させる塗布剤を施すことも有効です。定期的な清掃・消毒と合わせて清潔な環境を維持しましょう。

照明、音響、空調

照明、音響、空調は、患者とスタッフにとって快適な空間をつくる重要な要素です。

照明は空間の雰囲気を大きく左右します。待合室には柔らかい光や間接照明、調光機能付きの照明を取り入れることで、時間帯や用途に合わせて明るさを調整でき、リラックスできる空間を演出できます。診察室には十分な明るさを確保し、自然光に近い色温度の照明を選ぶことで、患者の不安を軽減しつつ診察や治療をスムーズに行える環境をつくれます。

音響も空間の快適性に大きく影響します。待合室には防音対策を施し、BGMを流す場合は穏やかな音楽を選びましょう。診察室ではプライバシーに配慮し、会話が漏れないよう防音対策が大切です。特に診察室と待合室の間の壁を天井までで止めてしまうと、天井裏を通って会話が漏れてしまうことがあります。壁はスラブ(上階の床)まで立ち上げて音の回り込みをできるだけ防ぎ、プライバシーを保てるようにしましょう。音は振動でも伝わるため、壁や扉が薄い、隙間があるといった状況も漏れの原因になります。この点は知見の少ない設計士もいるため、実施設計の段階で事前にしっかり相談してください。

空調は空間の快適さを保つために重要で、各部屋の用途に合わせて適切な温度・湿度・換気を計画し、感染対策にもつなげましょう。竣工後にトラブルになりやすい要素としては、結露の発生と、冷暖房の切り替えが諸室間で個別にコントロールできない点が挙げられます。

結露については、RC造(鉄筋コンクリート造)で建てて1年以内の建物はコンクリートに含まれる水分が多いため発生しやすい傾向がありますが、多くの場合2年目以降は軽減されます。また夏の高湿度時に出入り口付近にエアコンの吹き出し口があると結露が発生しやすいため、風除室の設置など事前の対策が必要です。冷暖房の切り替えについては、春・秋など季節の変わり目で部屋ごとに冷房・暖房の希望が分かれる場合に、システムを個別に切り替えられないと不満の原因になるため、各部屋を個別に管理できる空調計画にしておくとよいでしょう。

法規制と手続き

法規制と手続き

建築基準法

建築基準法は、建物の構造、設備、用途などに関する基準を定めており、これに適合しない場合は建築確認申請が許可されません。クリニックの設計を進める上で、建築基準法を理解し遵守することが不可欠です。

建物の高さ、面積、用途制限のほか、クリニックの用途によっては耐火構造や防火区画、避難経路の確保などが求められます。バリアフリー関連の規定もあり、高齢者や障害を持つ患者が安全に利用できる設計が求められる場合があります。これらの規定は地域の条例によって細かく定められていることもあるため、事前に管轄の行政庁に確認する必要があります。

なおビル診療所などで内装設計のみを行い、建築確認申請が発生しないケースもあります。ただしその場合でも建築基準法の考え方を踏まえた設計が必要になりますので、ビル側の要件を踏まえて設計士にしっかり確認してもらいましょう。

医療法

医療法は、医療を提供する施設の基準や医療従事者の資格などを定めた法律で、患者の安全と医療の質の確保を目的としています。クリニックの開設・運営においても医療法の規定を遵守する必要があります。

診療所の構造設備に関する基準として、診察室、処置室、検査室などの広さ、換気設備、照明設備、非常用設備の設置などが定められているほか、医師・看護師など医療従事者の適切な配置も求められます。診療内容についても、医療広告に関する規制や個人情報保護に関する規定など様々なルールがあります。

クリニックを開設する際には、これらの基準を満たしていることを確認し、必要な手続きを行う必要があります。なお保健所や担当者によって指導される内容が変わることもあるため、基本設計の段階で一度保健所に相談し、設計内容に指導事項がないか確認しておくとよいでしょう。

消防法

消防法は、火災の予防と、火災発生時の被害を最小限に抑えるための法律です。クリニックにおいても、建物の規模や用途に応じて消火設備、火災報知設備、避難設備などの設置が義務付けられているほか、防火管理者の選任や消防訓練の実施なども求められます。非常口や避難階段、誘導灯の設置といった避難経路の確保も重要で、内装材には不燃性または難燃性の材料の使用が推奨されています。

近年は災害や感染症対策を踏まえた事業継続計画(BCP)の整備も求められる傾向にありますので、有事に備えた安全対策として検討しておくとよいでしょう。設計段階から消防署などの関係機関に相談し、適切なアドバイスを受けることも重要です。

余談ですが、消防法は既存の建物にも遡って適用される点で建築基準法と異なります。建築基準法では法改正後も建てた当時の基準が認められる「既存不適格」という考え方がありますが、消防法は基準が変わると既存の建物にも適合が求められます。以前スプリンクラーに関する法改正があった際は、猶予期間中に対応すれば補助金が出る制度が設けられたこともありました。猶予期間を過ぎて自費で整備するとかなり高額になるため、消防法の改正があった際はご注意ください。大きな改正が頻繁にあるわけではありませんが、情報は継続的に確認しておくとよいでしょう。

開業準備をスムーズに進めるために

開業準備をスムーズに進めるために

資金調達

クリニックを開業するためには多額の資金が必要となり、自己資金だけでは賄えない場合が多いため、様々な資金調達方法を検討する必要があります。融資、自己資金、出資、リースなど、それぞれの特徴を理解し、最適な資金調達プランを立てることが重要です。

金融機関からの融資は、開業資金の主要な調達手段の一つです。政策金融公庫や民間銀行など、様々な金融機関が医療機関向けの融資を提供しており、融資を受けるためには事業計画書の作成や担保の提供などが必要となります。自己資金は開業資金の重要な要素で、多いほど融資審査が有利になるだけでなく、開業後の経営も安定しやすくなります。

出資は他の人や企業から資金を調達する方法で、出資を受ける場合は医療法人などの法人であることが必要です。開業当初から法人としてスタートすることも可能ですが、事業が安定した1〜3年後に医療法人化する方が多いです。出資を受けることで金融機関などからの資金調達がしやすくなるほか、出資者が医療に強い方であれば経営面のアドバイスを得られることもあります。

ただし医療法人に出資してもらう場合、出資者は医療法人の「社員」となります。社団医療法人の最高意思決定機関は社員総会であり、社員は出資額の多寡にかかわらず1人につき1個の議決権を持ちます(医療法第48条の4第1項)。株式会社のような資本多数決とは異なり、出資額が多くても議決権が増えるわけではありませんが、社員の過半数を他者に握られると経営の意思決定が先生の意向通りに進まなくなるリスクがあります。そのため医療法人の社員はご家族など信頼できる関係者で構成されるケースが多いです。

ご親族以外からの出資はあまり多いケースではないため、出資を検討される場合は医療コンサルタントや弁護士にも相談してください。また医療法人には非営利性が求められ、医療法第54条により剰余金の配当が禁止されています。相場より著しく高い賃料の支払いなど、実質的な利益分配とみなされる行為(配当類似行為)も規制対象となるため、出資の見返りとして利益還元を行うような設計は認められない点に注意が必要です。

リースは、医療機器などを購入する代わりにリース会社から借りる方法で、リース料を支払うことで初期費用を抑えられます。資金調達の方法はクリニックの規模や診療科目、経営状況などによって異なりますので、専門家のアドバイスを受けながら最適なプランを立てることが重要です。

物件選び

クリニックを開業する上で、物件選びは非常に重要な要素です。診療圏調査を行い、患者数の見込みや競合の状況などを把握した上で、立地条件、広さ、設備、周辺環境などを考慮しながら最適な物件を選びましょう。

交通の便が良い場所は患者にとってアクセスしやすく集患に有利ですが、駅から近い物件は地価が高い傾向にあるため、事業計画上の収支予測も大切です。診療科目によっては駅前でない方が良いケースもあるため、地域の街づくり計画も踏まえて戦略的に検討するとよいでしょう。

物件の広さは診療科目や必要な設備によって異なります。診察室、処置室、待合室、受付、スタッフルームなど必要なスペースに加え、医療設備を設置するための電源容量や配管、換気設備なども確認しましょう。CTやMRIなどハイスペックな医療機器を導入する場合、建物の重量制限や電力不足(別途キュービクル設備が必要になり高額な工事が発生する場合があります)、搬入路の有無などによって制限を受けるケースがあるので注意が必要です。

周辺環境は患者の満足度やクリニックのイメージに影響します。周辺施設や騒音・日照の問題がないかを確認し、特に近隣に同じ診療科目の先生がいる場合はトラブルにならないよう事前にできる対策を行うとよいでしょう。賃料や初期費用も含め、専門家のアドバイスを受けながら慎重に物件を選定しましょう。

業者選定

クリニックを開業するためには、設計事務所、施工業者、医療機器や薬の卸・メーカー、医療コンサルタント、会計士・税理士など、様々な業者との連携が必要となります。各業者の役割分担を明確にし、実績・費用・対応などを比較検討しながら選定を進めましょう。

設計事務所はクリニックの設計を担当します。医療施設の設計実績が豊富で、コンセプトを理解している事務所を選び、綿密な打ち合わせを重ねましょう。施工業者は設計図に基づいて工事を行うため、医療施設の施工実績が豊富で信頼できる業者を選び、連携を密にして品質管理を行いましょう。

医療機器や薬の卸・メーカーは、機器の選定・納品・設置を担います。必要な医療機器をリストアップし、複数のメーカーから見積もりを取って比較検討しましょう。ただし医療機器メーカーは、最初に見積もり依頼をしてきた医療卸にしか最安値を提示しないことが一般的です。医療卸を決めないまま複数のメーカーに依頼すると、その卸経由でしか最安値が出ない結果になりかねません(メーカーと交渉してそれを避けることも可能ですが、相応の手間がかかります)。そのため、今後付き合う医療卸をある程度見定めてから見積もり依頼を進めるとよいでしょう。メーカーから直接購入できる機器は直接価格交渉した方が安くなるケースもありますが、スケールメリットが効く場合や価格交渉が得意でない場合は医療卸経由の方が有利なこともあります。この点は医療コンサルタントがいれば相談しながら進めるとよいです。

業者選定はクリニックの開業準備における重要な要素です。複数の業者から見積もりを取り、専門家のアドバイスを受けながら慎重に検討しましょう。

まとめ:理想のクリニックを実現するために

まとめ:理想のクリニックを実現するために

クリニック設計は、理想のクリニックを実現するための重要なプロセスです。この記事では、クリニック設計の基本から、デザイン、費用、法規制、開業準備まで、開業に必要な情報を網羅的に解説しました。

これらの情報を活用し、患者とスタッフにとって最適な空間を創り出し、開業・運営を成功させましょう。

デザイン建築設計事務所のスタッフには、医療コンサルティングを長年勤めてきたスタッフもおります。何かあれば設計以外の部分もアドバイスできますので、お気軽にご相談ください。

皆様の理想のクリニック実現を心から応援しています。

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